朝日新聞 9月23日 住まいのお役立つコラム 筆者(ひっしゃ): 鈴鹿(すずか)則子(のりこ)
節電の夏にさようなら
お彼岸(ひがん)に入り、厳(きび)しい残暑(ざんしょ)もやっと一段落(いちだんらく)。酷暑(こくしょ)と節電(せつでん)のダブルパンチによく耐え(たえ)、節電令(せつでんれい)はめでたく予定より早く解除(かいじょ)された。
「でも」と私は思う。
この夏は冷房(れいぼう)を使うことを憚(はばか)られたせいか大人にもあせもが流行(りゅうこう)するなど、今までとは違(ちが)う夏であったが、節電に協力(きょうりょく)するうちに、今までの「何でも使い放題(ほうだい)の暮らし方」を反省(はんせい)するというよい面もあった。皆が今までの暮らし方を改(あらた)めない限(かぎ)り、世の中はどんどん危険な方向に進(すす)んでいくということを感じた人が多 かったようである。
私が住んでいる街にも今年はグリーンカーテンとサン・シェードが急増(きゅうぞう)し、おおむね3軒(けん)に1軒は、家の西側・南側の窓にゴーヤ、ひょうたん、朝顔などの緑のカーテン、サン・シェード、よしずなどの日よけが取り付けられていた。
お向かいの若いお嬢(じょう)さんからは「家で採(と)れたゴーヤです」と節電の余禄(よろく)、小さなゴーヤを二ついただいた。お裾分(すそわ)けという古き良き文化を思い出し、心が温(あたた)まった。
日々の暮らしの中からいつの間にか忘れ去(さ)られていた「美しい日本の文化、知恵(ちえ)と工夫(くふう)の日本人の暮らし」を今回の節電は思い起こさせてくれた。日よけを始め、朝晩(あさばん)の打ち水、電気の節約(せつやく)、陰影(いんえい)のある照明(しょうめい)。不必要な照明を消し、明るいところと暗いところがあるほうが返って趣(おもむき)が出てすてきだということを思い 出した。
どこもかしこも煌々(こうこう)と明るくする必要はないし、公共(こうきょう)の乗り物を過度(かど)に冷(ひ)やす必要もない。大汗(おおあせ)をかきながらネクタイを締(しめ)めている姿(すがた)は見ているだけで暑苦(あつぐる)しいし、街の景観(けいかん)の邪魔(じゃま)をする自動販売機(じどうはんばいき)も今ほどの数はいらない。
私たちは慣(な)れてしまうと、すぐにそれが当たり前と思い込む癖(くせ)があるようだ。そして、あまりにも「便利」に毒(どく)され、「労力(ろうりょく)の省(しょう)エネ」に走りすぎている。生 活の現場(げんば)でも実に多くの電気製品(せいひん)に囲(かこ)まれ、全てのコンセントはつけっ放し、使っていない部屋の電気も消さない、ややもすると無人(むじん)の部屋でテレビだけがしゃべり続けているという光景(こうけい)にさえ出くわしていた。
みんなで節電すれば効果(こうか)は得(え)られるのだと実感できた今年の夏は、暮らし方を見直し、良い方向にかじを切るエッポックメイキングな夏だったと位置(いち)づけられるのではないだろうか。
節電のために不要な電気は消してほしいが、例外(れいがい)は門灯(もんとう)である。各戸(かっこ)が協力して道を明るくし、通りの安全性(あんぜんせい)を高めるという観点(かんてん)から、門灯だけは各戸必ずつけてほしい。
安心で安全な暮らしをこれからも続けていくためには、私たちが守るべき生活価値(かち)をいま一度洗い直し、必要なものと不要なものの仕分(しわ)けをする必要がありそうだとつくづく感じた夏であった。
冬にもまた節電令が出るかもしれない。心を引き締(しめ)めたままこの秋を過ごしたいと思う。
マンションのグリーンカーテン
マンション上階(じょうかい)のグリーンカーテン
一戸建て(いっこだて)など2階までのグリーンカーテン
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